信州建築構造協会

公開セミナー|ASBS 信州建築構造協会|耐震診断は構造設計のプロ集団 ASBSへ

信州建築構造協会 3月例会公開講演会のご案内

主催 信州建築構造協会
開催日 2026/05/07
講演内容
第一部
演 題「歴史と環境から考える木構造デザイン」
PM2:20~PM4:20
山田憲明構造設計事務所 主宰
山田 憲明 様
第二部
演 題 「実践を通じた鉄筋コンクリート構造の探求」
PM4:30~PM6:00
名古屋大学 大学院環境学研究科 准教授
日比野 陽 様
会場

長野市 ホテル国際21

長野県長野市県町576 TEL:026-234-1501

セミナーレポート

挨拶する大日方会長

木造の進化とRC造の実証探る
3月例会で山田氏と日比野氏が講演



信州建築構造協会(大日方貞夫会長)は、3月例会をホテル国際21で3月19日に開催。山田憲明構造設計事務所主宰の山田憲明氏と、名古屋大学大学院環境学研究科准教授の日比野陽氏が講演を行った。 山田氏は、「歴史と環境から考える木構造デザイン」をテーマに登壇。伝統建築に学ぶ構造思想と現代技術、地域材活用を融合させることで、木造建築の新たな可能性が広がると訴えた。講演では、薬師寺大講堂の解析や文化財建築調査に携わった経験を紹介し、「過去の建築には現代にも通じる知恵がある」と語った。

講演の前半では、木造ラーメン構造をテーマに、柱梁接合部の剛性確保が難しい木造特有の課題を解説。その一方で、寺社建築に見られる垂れ壁や方杖、持ち送り板などが水平力に抵抗する仕組みを持つとし、伝統技術を現代設計へ応用する視点を示した。代表作として挙げたのが、大分県立武道スポーツセンター(2019年)。約70m×100mの無柱空間を持つメイン競技場を、一般流通のスギ製材で実現した。部材長を4m以下に抑え、円弧アーチとトラスを組み合わせた屋根架構を採用。E50材を主体に使いながら、負荷の大きい部位にE70材を配置するなど、材料性能を見極めた合理的設計を行ったと説明した。


講演する山田憲明構造設計事務所 主宰 山田氏


山田氏は「木造は単に木を使うことが目的ではなく、材料寸法や調達、加工、施工まで含めて設計することが重要」と強調。「歴史に学び、地域の環境を読み解くことで、木造建築はさらに進化できる」と締めくくった。


山田氏の講演

名古屋大学大学院環境学研究科の日比野陽氏は、「実践を通じた鉄筋コンクリート構造の探求」と題して講演した。鉄筋コンクリート(RC)構造は、鉄筋とコンクリートの複合材料で、現場施工に伴うばらつきが大きく、破壊後の非線形特性の評価も難しいと指摘。そのため、性能を正しく捉えるには、静的・動的実験、解析、地震被害調査、センサーを用いた実構造物の評価といった「実践」が不可欠だと述べ、自身が取り組んできた研究事例を通じて知見を紹介した。


講演する名古屋大学 大学院環境学研究科 准教授 日比野氏

講演の中心の一つは、「損傷が少ない壁付き部材」の開発だ。壁付き部材は、耐力や靱性、エネルギー吸収性能に優れる半面、地震後に非構造壁の損傷が大きくなり、使用性や継続性を阻害する恐れがあるという。そこで、壁筋を定着しないディテールを提案。壁に圧縮力のみを負担させることで、壁面全体のひび割れを抑え、危険断面付近に損傷を集約する考え方を示した。梁試験体による検証では、安定した履歴と高い靱性能を示し、壁のない部材よりも耐力が大幅に向上。危険断面位置以外のひび割れは非常に少なく、損傷抑制効果を確認したと報告した。


日比野氏の講演


さらに、大型振動台実験施設「Eディフェンス」で、壁筋の定着を除いた壁付きRC部材を組み込んだ縮小3層RC造建物の振動実験も紹介。タイルや窓、天井材など非構造部材も含めて継続使用性を検証したもので、100%告示波では大きな被害は見られなかった一方、150%以上ではひび割れの拡幅やタイルの剥離、壁付き柱のコンクリート剥落、スラブの大きなひび割れも確認された。目標とした数字はわずかに上回ったが、損傷の少ない部材として一定の有効性を示したとした。

日比野氏は、こうした部材実験や振動台実験を通じ、修復性を阻害しにくく、レジリエンスに優れたRC部材の可能性を示せたと説明。計算だけでは捉えきれない構造挙動に向き合うには、実験と現地調査、計測を重ねながら実証を積み上げる姿勢が重要だと訴えた。


懇親会

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